top of page

全国新聞教育研究大会箱根大会分科会①

「NIEと深い学び~ちょっと難しいから、かえって面白い~」

講師:関口修司氏(日本新聞協会NIEコーディーネーター)

分科会①全体.jpg

 「主体的・対話的で深い学び」が新しい新学習指導要領のキーワードとなっており、私はNIEがそのこととどのように関わっていくのかお話ししたいと思う。最近の教育はイラストが多くて文章は少ない方がいいという風に難しいことを避ける傾向があるが、私はちょっと違うと思う。少し難しくなければ、子どもたちのやる気が出ない。難しいからこそ「主体的・対話的で深い学び」が可能になるのではないか。そういう意味で副題に「ちょっと難しいからこそ、かえって面白い」とつけている。

 

●NIEで学力向上

 

 NIEをする前と後の学校の学力調査(国語)を見ると、いずれの学年も学力が上がっている。NIEの教育効果は確実といえる。さらに、算数も同じように効果が出ている。算数・数学は読解力にかなり影響される。その読解力を鍛えられるのがNIEだろうと私は思っている。

 「5.6」。これは昨年の女子高生のスマホの1日平均使用時間(デジタルアーツ調べ)だ。1年で2044時間もスマホを使っていることになる。この時間は1年間学校で学ぶ時間の2.5倍に相当する。7万人を対象にした川島隆太先生(東北大学加齢医学研究所教授)と仙台市教育委員会との共同調査で、家で学習習慣のない子でスマホを使用していない群はスマホを使っている群より学力が高いという結果が出た。スマホ使用時間が長ければ長いほど学力が低くなる。翌年追跡調査したが、使わない子が使うと成績は急降下し、逆にスマホを使っている子が使わなくなると成績は徐々に上昇するという結果が出たという。スマホと学力とはあまり思わしくない相関関係があることを認識していただきたい。

 

●1日30分、新聞を読む時間を

 

 読解力には私は3つの峰があるのではないかと思う。一つは連続型テキスト(物語、解説、記述、議論・説得、指示など、文と段落から構成される文章など)をより正確に読む力。もう一つはその連続型テキストの全体像をつかむ力。最後の一つは非連続型テキスト(図・グラフ、写真、表・マトリクス、技術的な説明など、データを視覚的に表現したもの)を読み解く力だ。今、求められているのはこの非連続型テキストを文章と併せて読み解く力だ。最近の全国学力・学習状況調査を見ると、国語の問題でもグラフや絵などいろいろな資料が入っている。これは文章や物語だけ読んでも身につかない。では何がいいかと言うと、私はNIEだと思う。新聞の紙面には文章と、写真、グラフ、表、地図などが掲載されている。そういう資料と一緒に見る力が今、求められており、意図的にその力を付けさせなければならない。新聞紙面の一覧性という特性を利用しながら、いろいろな情報に触れていく、それを統合しながら理解するという読解力をつけなければいけない。

 

 そこで「1日30分間新聞を読みましょう」と提案したい。これを実践すると、1年間で182.5時間新聞を読むことになる。小学校の国語は175単位時間、中学1、2年は140単位時間なので、正味131時間、116時間しかない。180時間を超える時間を日常の中に組み入れることがとても大事。学校だけでできることではないが、各家庭に語りかけていく必要はあるのではないか。学校でも朝や帰り前の時間、昼休み時間の10~15分を利用して新聞を読む時間を作れないかなと思う。

●子どもの背中を上手に押す教師に

 

 これは今年4月半ばにあった全国学力テストを私が分析した結果だ。

平成30年度全国学力・学習状況調査.jpg

 これらのことから言えるのは「『※NIEタイム』だけでかなり培えるのではないか」ということだ。論理的な理解、批判的な読み、要約力、質問力、文章から推測する力、文章表現力といった資質・能力などがNIEタイムで育まれると私は思う。たまにやるのではなく、週に1回という風に定期的継続的に続けるのがNIEタイムだ。小学校6年の問題Bでは「端然(たんぜん)」「へきえき」など難しい言葉が出てきたが、分からないことで思考停止するようだと解けなくなってしまう。分かるとこだけで文章の意味をとらえられる子どもにすることが大事だ。それには普段から新聞を読むことが大切だ。分からないことを読み飛ばし、見出しと分かることだけで大体何を言いたいのか、つかむことができるからだ。

 

※NEIタイム活動の基本的な流れ

                   

新聞を読み記事を選ぶ      

    ↓           

記事を切り抜く         

    ↓           

ワークシートに貼りコメントを書く

 数は多くないが、15校のNIE実践校と全国の平均を比較してみた。その結果、国語だけでなく算数・数学もNIE実践校の方が3~5ポイントいいということが分かった。おもしろいのは、NIEタイム実践校はさらに数ポイントいいということだ。新聞を教材として扱うことはとても重要だが、さらにNIEタイムにつなげることがいい結果を生む。その場合大切なのは子ども主体で無理なくコツコツやることだ。子どもたちは初めは難しい、面倒くさいと言う。でも「嫌ならやめていいよ」ではだめ。続けるうちに子どもたちは絶対「よかった」と言うようになる。3カ月続ければ、その良さを実感するようになる。だから、教師のやり方が重要なのだ。子どもたちの背中を上手に押す先生になってほしい。「主体的」ということを間違って解釈してほしくない。子どもたちを上手に励ましながら、NIEの良さを実感できるまでにもっていくことが大切だ。

 

●「深い学び」を新聞で

 

 以下は新学習要領がねらう学習過程とNIEとの関連を示したものだ。

新学習指導要領がねらう学習過程と.jpg

 新学習指導要領では「つかむ」「調べる」「まとめる」「振り返る」、全体として「熟考する」ということをねらっている。文部科学省の方と話していると、「音声言語で広げて文字言語で深める」ことをよく耳にする。「新聞で情報をつかみ」「新聞で調べ」「新聞形式でまとめ」、そして「新聞で社会につなげる」ことに置き換えられるのではないか。

 NIEは①「問い」を生み出す②「知識」を増やす③「根拠」をみつける④「対話」を創る⑤「理解」を深める⑥「思考」を形にする――ことを創り出す。そのまま「主体的・対話的で深い学び」に直結すると私は考える。

bottom of page