全国新聞教育研究大会箱根大会分科会②

「思考力・判断力・表現力を高めるための学習指導のあり方

 ~学年の系統性を重視した新聞づくりと活用を通して~」

講師:石塚久美子氏(茨城県坂東市立神大実小学校教諭)

 神大実地域は3世代同居の児童が多く、新聞購読率が大変高い。現在、担任している6年生の家庭の新聞購読率は8割を超えている。NIEを進めるには大変恵まれた環境にある。

 国語科や社会科を中心とした授業で、新聞記事を活用して自分の言葉で意見を書いたり、学習のまとめとして新聞を活用したりするなどの言語活動の充実を通し、書く力を重視した、伝え合う力の育成を図ること。同時に、児童一人一人の言語に対する関心を高め、多面的多角的な見方・考えを深めながら、思考力・判断力・表現力を高めることを狙いとして研究を進めている。個人の活動から学年・ブロックの活動へ、そして全校を挙げての実践へと、学年の発達段階を重視することで、NIEの活動の場を少しずつ広げられたことをお話ししたい。

●NIEの日常化を目標に

 NIEを進めるに当たっての基本的な考えは▽教科や単元のねらいに迫る有効な手立て・有効な教科としての新聞作りを展開する▽教科書や各種資料からの多くの情報を精選し、必要に応じた内容を取り出し、読み手を意識したまとめ方の工夫をする▽学年の発達段階に応じて、系統性を重視した見方・考えた方を認め合う学習活動を展開する――の3つ。児童に身につけさせたい力を明確にし、継続した活動を行い、NIEの日常化という大きな目標に向かって進めている。

​●神大実小のNIEの取り組み

●新聞活用と新聞づくりはNIEの両輪と実感

 

 新聞を活用してのさまざまな学びが新聞づくりと強く結びつき、大きな相乗効果を生んでいることがこれらの実践を通して分かった。新聞活用と新聞づくりはまさにNIEの両輪だということを実感している。

 NIE活動は、計画集会委員会や放送委員会、給食委員会、図書委員会など各委員会が制作する新聞にも生かされている。また、自主学習ノートを見ると、新聞形式でまとめる児童が多いことに驚いている。NIEを始めてから、家庭のこども新聞の購読も増えるようになった。

 高学年の意識調査を見ると、「自分の考えが前より書けるようになった」「読む力が身についてきた」「考える力がついてきた」などNIE活動を肯定的にとらえる児童が8~9割に上った。こうした認識が自信になり、次のステップにつながると思う。

 NIE活動はまた学力の向上にも結びついている。同一学年の3年間の国語科・社会科の正答率が大きく向上したほか、「社会的な思考判断表現」「観察・資料活用の理解」の項目の正答率が全国平均を上回った。全国学力学習調査でも国語A・Bの平均正答率が全国平均を上回り、記述式の問題での無回答率が大幅に下がった。

 同僚の先生たちからもNIEについて「相手意識・目的意識が高まった」「知的好奇心が高まった」「多面的・多角的な見方・考え方が広がった」という評価をいただいている。

 今後の課題としては、読み取る力・意見を表現する力、制作した新聞の質の個人差があり、その解消に向けて児童への個別支援を改善していきたいと考えている。また、学びを共有する意見交換の場で深まりのある討論ができるよう導き、「主体的・対話的で深い学び」へ近づきたいと思う。

◆参加者との質疑応答◆

Q:話し合い活動を行っているとのことだが、何人でグループを構成するのか。

A:学級の人数の関係で3人のケースもあるが、基本は4人だ。

 

Q:石塚先生が赴任する以前から神大実小はNIEを全校で取り組んでいたのか。

A:私が新聞活用、新聞づくりに取り組んで15年、現任校に赴任して8年目になる。赴任当初はNIEに取り組んでおらず、茨城県のNIE実践指定校になってから全校に広げ始めた。

 

Q:NIEを学校全体に広げていくコツ、みんなで取り組む雰囲気づくりのコツを教えてほしい。

A:取り組み始めた時は「なんで今、新聞なのか」「低学年にできるわけがない」という反応で、NIEを周知するのに時間がかかった。教育の究極の目的は「子どもたちにどんな力をつけられるか」ということで、それにはいろいろな手段があるが、NIEが有効であることをまず知ってもらう必要がある。NIEがどんな成果を生むのか、他の先生にわかってもらうことが大事。「こんなことまでできるようになったのか」と子どもたちが変容する姿を見て、「やってよかった」「これもできるかな」と思うようになり、先生たちの知恵が集まり、広がっていった。そのことがうれしかった。

 

Q:今年から小学1年生の担当になり、はがき新聞づくりに取り組んでいるが、新聞づくりが苦手な子もいる。「子どもたちは楽しみながらやっている」と伺ったが、そのための工夫を教えてほしい。

A:低学年のうちは新聞の写真に目を向けた活動を行っている。1年生の時は動物の親子の写真を見てもらい「どんな会話をしているのかな」と問いかけるなど、五感を刺激して子どもたちの言葉を引き出す活動をしている。2年生では、新聞の写真を使って詩を作る活動に広げている。自分もこういう活動をして、小さいうちに新聞に親しむということがいかに大切かということに気付いた。

 

Q:4年前は地域の新聞購読率が60%あり、その後、NIE実践指定校になり、増えるかなと思っていたが、今では50%になってしまった。新聞購読率が80%とのことだが、そのために何かしていていることはあるのか。

 

A:もともと新聞の購読率が高く、新聞を取っていない方が珍しいという地域だが、最近は若い世代で新聞を取っていない世帯もいる。1学年に5人ぐらいおり、そういう家庭の児童には学校で取っている新聞を活用させている。個人的な考えだが、新聞を使うことが勉強に役立つ、力がつくことを保護者に知らせ、その効果を認識してもらうことが大切なのかと思う。

 

Q:NIEの効用、大切さを家庭にどうアピールしているのか。

A:校内にNIEコーナーを設けているほか、授業参観でNIEの授業を公開している。個人的には学級通信の中でNIEの取り組みを伝えている。NIEの実践でいろいろな賞をもらっているので、地域にはNIEの良さを分かってもらえていると思う。

© 2018by zenshinken